こんな方におすすめ
- 発電効率や熱効率の低下に直結するプロセスラインにおいて、配管閉塞を防止するための有効な技術を探している。
- 安定供給の維持と燃料コスト削減に向けた熱交換器の汚れ防止対策として、現在業界で導入されている主な手法とその費用対効果に限界を感じている。
- 予期せぬインフラの停止(ダウンタイム)を避けるため、設備を止めずに汚れ対策ができるオンラインの防汚・洗浄テクノロジーを比較・検討したい。
- サステナブルなエネルギー生産に向け、プラントの汚れ防止を実現し、強固なスケールを根本から予防できるシステムについて理解を深めたい。
サマリー
エネルギー・電力分野における熱交換器や配管の汚れ(ファウリング・スケール)は、発電効率や熱伝達効率の著しい低下を招き、稼働効率のみならず、政府が掲げるカーボンニュートラル目標の達成を阻害する深刻な経営課題です。
これを解決するには、「汚れてから洗う」という事後保全を脱却し、最新のテクノロジーによって「稼働しながら汚れを予防する」ことが不可欠です。本記事では、プラントの汚れ防止による安定供給の維持、人手不足の解消、そして省エネ・脱炭素化を同時に達成する次世代のスマート保全アプローチについて解説します。
脱炭素時代の壁となる「熱効率の低下」と電力・エネルギー業界の課題
エネルギーや電力、熱を生産するプロセスにおいて、設備の汚れは単なる現場の清掃負担にとどまりません。それは、燃料消費量の増大と温室効果ガス(CO2)排出量に直結する経営上の損失そのものです。
経済産業省の「エネルギー白書」等にも示されている通り、日本が排出するCO2の約4割は電力部門から排出されています(1)。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの主力電源化が進む一方で、天候によって出力が変動する再エネを支える「調整力」として、火力発電等の果たす役割は依然として重要です。 今後、非効率な火力発電所のフェードアウトや、水素・アンモニア等のCO2フリー燃料への転換が進められる中、既存の発電インフラにおいては「いかに設備全体の熱効率を高く維持し、余分な燃料消費と排出を抑えるか」が至上命題となっています。
出典:
(1) 経済産業省「エネルギー白書2021」第1部 エネルギーをめぐる状況と主な対策 第2章 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組 第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/1-2-3.html
しかし現実には、流体中の成分が析出・凝集することで熱交換器や配管にスケールやファウリングが発生し、熱効率は稼働とともに低下していきます。日本国内の発電所やエネルギープラントに共通の事情として、定修以外の予期せぬ停止(ダウンタイム)がもたらす脅威が年々増大しています。配管が閉塞したり、熱交換器の汚れが限界に達して発電設備が一部でも緊急停止した場合、電力や熱の安定供給という社会的責任を脅かすだけでなく、設備の再立ち上げ時に莫大なエネルギーロスが生じます。 加えて、保全作業員の高齢化や熟練技術者の退職が進む日本の現場では、配管閉塞時の足場設置や分解洗浄、安全確認に必要な人員確保が以前にも増して困難になっています。
このように、脱炭素へのプレッシャーと供給責任、そして現場の人手不足という三重の課題を抱える日本のエネルギー業界にとって、従来通りの「汚れてから洗う」という保全スタイルは負担が大きいと言えます。
エネルギー生産を止めない「連続防汚」への発想転換と実証効果
従来のファウリング対策は、主に高圧洗浄や化学薬品を用いた洗浄に頼ってきました。しかし、高圧洗浄は洗浄のたびに設備を停止させなければならないという根本的な弱点があり、化学洗浄も薬品の取り扱いや廃液処理による環境・安全リスクを抱えています。
エネルギー効率を高く保ち、サステナブルな操業を実現するためには、「設備を止めずに予防する」アプローチへの転換が絶大な効果をもたらします。ここでは、エネルギー・インフラ分野における具体的な実証例を2つご紹介します。
事例1:バイオガス発電プラントにおけるダウンタイムの劇的削減
農業廃棄物からバイオガスと肥料を持続的に製造するDuctor(ダクター)社のプラントでは、発電プロセスで発生する強固なストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)のスケールにより、1〜2日ごとにクエン酸と高圧洗浄による生産停止を余儀なくされていました。しかし、外部からスケールを根本から予防できるシステム(ハイパワー超音波技術)を導入した結果、スケールの堆積が強力に抑制され、洗浄に伴うダウンタイムを「1日2時間」から「月わずか2時間」へと劇的に削減することに成功しました。(2)
事例2:原子力発電所の冷却水配管における「ホットスポット」の低減
作業員の立ち入りが厳しく制限される原子力発電所などの過酷な環境では、洗浄作業自体が極めて困難です。原子力発電所の事例では、冷却配管の一部に放射性物質が局所的に蓄積した「ホットスポット」が発生しましたが、立ち入り制限により内部の洗浄ができないという課題がありました。
そこで、該当箇所から50cmほど離れた配管の外側に超音波振動子を取り付け、遠隔から照射を行ったところ、わずか5分ほどの照射で配管内部の汚れが分散・除去され、放射線レベルを60〜70%低下させることに成功しました。これは、設備を停止・分解できない過酷なインフラ環境において、外側からの遠隔アプローチが有効であることを示しています。(3)
写真:原子力発電所内のホットスポットに設置された振動子
出典:
(2) Increased Operation Uptime in a Biogas Plant with Power Ultrasound
https://altumtechnologies.com/increased-operation-uptime-in-a-biogas-plant-with-power-ultrasound/
(3) 日鉄エンジニアリング株式会社の調査による
既存設備を活かして配管閉塞・焦げ付きを防ぐテクノロジーの役割
プロセスを止めずに汚れを防ぐ具体的なアプローチとして、近年注目を集めているのが「外部からアプローチできるテクノロジー」、特に最新のソフトウェア制御を用いたハイパワー超音波技術です。
この技術の最大の利点は、既存のプロセスラインの配管を切断したり設備を改造したりすることなく、配管の外側に装置を取り付けるだけで導入できるという点にあります。

図:超音波システムの設置イメージ
流体や設備の特性に合わせて最適化された極低周波帯域の超音波を外部から照射すると、配管の金属表面を伝搬する波(ラム波効果)が汚れを壁面に寄せ付けず、付着を抑制します。さらに、液体中に伝わる粗密波(縦波)やキャビテーション(微細気泡の発生と圧壊)が持つ強いせん断力と衝撃により、液中の凝集物を分散・微細化し、結晶核の生成をコントロールします。
これにより、発電・熱生産プロセスにおける無機スケールの根本的な予防だけでなく、熱処理工程において配管内に有機物がこびりつくのを防ぐ焦げ付き防止技術としても、極めて高い効果を発揮します。
グリーン成長戦略に合致するクリーンテック投資の価値
「設備を止めずに汚れを防ぐ」連続防汚システムへの移行は、単なる現場のメンテナンス費用の削減策ではありません。国の「グリーン成長戦略」推進に貢献し、企業のエネルギー効率を劇的に高める、戦略的な「クリーンテック投資」として評価されるべきものです。
1. エネルギー効率・熱伝達率の最大化
熱交換器の伝熱面にスケールや汚れが付着すると、それが断熱材の役割を果たしてしまい、熱伝達効率が大きく低下します。常に伝熱面をクリーンな状態に保つテクノロジーを導入することで、所定の出力を得るために余分に消費されていた燃料を抑え、プラント全体の熱伝達率と発電効率を最大化・最適化することが可能になります。これは、インフラストラクチャーとしての最も確実な「省エネ対策」となります。
2. サステナブルな操業への寄与と環境負荷の低減
事後洗浄の頻度を減らすことは、有毒な化学物質の使用と廃液を排除することに直結します。前述のバイオガスプラント(Ductor社)の例では、連続防汚システムの導入により、年間に使用するクエン酸の量を約6トンも削減することに成功しています。化学薬品の製造・輸送・処理にかかる温室効果ガスの排出量を低減することは、政府が産業界に求める脱炭素化の動きにも完全に合致しています。
3. オペレーションの合理化と人手不足への対応
定修以外の突発的なトラブル対応や、高所・閉所での危険な機械的メンテナンス作業を劇的に減らすことは、労働力不足が深刻な日本市場において非常に重要です。遠隔からIoT・DX技術を活用して最適な状態を監視・制御するスマートな予防保全は、現場の安全リスクを下げ、24時間365日止まらないインフラの合理的な運営を実現する切り札となります。
次世代のエネルギープラントマネジメント
電力・エネルギー分野のプラント運営において、電力の安定供給と環境配慮(サステナビリティ)を両立させるためには、「汚れたら洗う」という旧来の事後保全から、「そもそも汚さない」スマート予防保全へのパラダイムシフトが強く求められています。
プロセスを稼働させたままスケールや焦げ付きを根本から予防できる最新の防汚システムは、日本国内の発電所やエネルギープラントが直面している「稼働効率の向上」と「脱炭素の達成」という難題を同時に叶える最良のソリューションです。熱効率の低下による隠れた損失を放置せず、最先端のクリーンテクノロジーを活用して稼働率100%を目指すことが、次世代のインフラマネジメントの要となるでしょう。
日本国内でも、このような高度なハイパワー超音波技術を活用したスマート保全サービス(日鉄エンジニアリングが展開する「HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)」など)が展開しています。
自社プラントへの適用可能性を知るために、まずは以下のリンクより詳細情報をご確認ください。
