エバポレーターのスケール防止策|黒液・赤液濃縮プロセスでの改善事例

オンライン防汚3

こんな方におすすめ

  • エバポレーターのスケール対策として事後洗浄を繰り返しているが、頻繁な生産停止(ダウンタイム)と再起動時のエネルギーロスに課題を感じている。
  • 濃縮プロセスで生じるバーカイトや炭酸カルシウムなどの強固なスケールに対し、配管閉塞を根本から防ぐ技術を探している。
  • 稼働を優先するため、設備を止めずに汚れ対策ができるオンライン防汚技術の具体的なメカニズムを知りたい。
  • 薬剤洗浄や高圧洗浄といった事後対処ではなく、スケールそのものを予防できるシステムを探している。

サマリー

パルプ・製紙や化学業界などで使用されるエバポレーター(蒸発缶)では、配管内のファウリング(バーカイト(burkeite)や炭酸カルシウムなどの無機塩スケール)が熱伝達効率を著しく低下させ、莫大なエネルギー損失を招きます。この課題を解決するには、「汚れてから洗う」事後保全から脱却し、スケールそのものを予防するシステムへ移行することが不可欠です。

最新のハイパワー超音波技術による「ソノクリスタライゼーション(超音波晶析)」を用いれば、設備を止めずに汚れ対策が可能です。海外の導入事例では、洗浄回数の劇的な削減とエネルギー効率の大幅な改善(最大50%超)が報告されています。

固形分50%超の過酷な濃縮プロセスと、無機塩スケールの問題

蒸発・濃縮プロセスにおけるスケール形成は、一般的な配管汚れとは異なり、流体の状態変化(過飽和)に起因する極めて強固なものです。そのため、従来とは異なるアプローチが求められます。

パルプ・製紙プラント(黒液・赤液など)や化学プラントの多重効用缶プロセスは、水分を蒸発させて有用成分を抽出したり、廃液を濃縮して燃料化したりする重要な役割を担っています。プロセス液が複数のエバポレーターを通過する際、ドライ固形分は最初の段階の約10%から、最終段階では50%超へと急激に上昇するケースもあります。したがって、エバポレーター内部は非常に過酷な環境といえます。

この濃縮過程では、流体中のバーカイトや炭酸カルシウムなどの無機塩が、伝熱面の上流で過飽和状態に達します。過飽和となった成分は粒子の凝集体を形成し、配管内部の表面に析出して結晶として成長を続け、強固なスケールとなります。エバポレーター内のファウリングはプロセスの性質上必然的に発生する物理・化学的現象であり、事後洗浄では非常に手間のかかる、プラント保全における難所と言えます。

配管のファウリングが引き起こす稼働への悪影響

エバポレーターの汚れを放置したり事後洗浄に依存したりする体制は、熱効率の悪化にとどまらず、ポンプやプロセス全体に多大な負荷をかけます。

配管内部のファウリングはそれ自体が大きな熱抵抗となり、熱伝達効率を著しく低下させます。これにより所定の蒸発量を得るために過剰な蒸気消費が必要となり、結果としてCO2排出量の増加を招きます。

さらに、稼働への影響も深刻です。最も温度が高く固形分が多い最終濃縮段階の効用缶ではファウリングの進行が最も早く、海外のケースでは月に複数回、1回あたり1〜5日間の洗浄停止が必要となることもありました。これを年間換算すると、最大120日もの生産中断を余儀なくされることになります。(1)

出典:
(1) Altum Technologies社Webサイト
https://altumtechnologies.com/references/fouling-prevention-in-evaporators/

配管閉塞の防止や機能回復のための洗浄による一時的な設備停止はもちろん、ラインの再起動時に膨大なエネルギーが失われることも大きな問題です。頻繁に操業を止めることは膨大な機会損失を生んでおり、連続操業を可能にする根本的な対策が急務となっています。

流体中の「灰分」の有無で変わる、スケール予防のメカニズム

最新の外付けハイパワー超音波技術は、単なる「汚れ落とし」ではなく、流体中の晶析プロセスや粒子挙動そのものに介入し、スケールを根本から予防します。

フィンランドのAalto大学などの研究機関では、インラインプロセス顕微鏡を用いた実機環境(100〜110℃)のラボ実証データが取得され、そのメカニズムが解明されています。ソノクリスタライゼーション(超音波晶析)は、流体の特性(特に灰分の有無)に応じて次のように作用します。

流体の種類 超音波の主な作用 スケール抑制のメカニズム
灰分を含まない流体 音響キャビテーション(微小気泡)が核生成サイトとして働く 液中(バルク内)での晶析を強制的に促進し、伝熱面付近の過飽和度を下げて配管壁面への付着を防ぐ
灰分を含む流体 縦波によるせん断力と、キャビテーション気泡圧壊時のマイクロジェット(衝撃波)が作用 灰を核として肥大化した粒子の凝集体を分散・微細化し、流体とともに排出させて付着を抑制する

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出典:日鉄エンジニアリング株式会社 サービスビジネス本部 スマート生産ソリューション部 稲田教介「HiPEA EcoFUL®*3 の紹介 ~ 超音波技術によるスマート保全サービス ~」

灰分を含まない黒液では超音波照射後(b)に粒子数が増加していることがわかります。これは、超音波により発生した音響キャビテーションによる気泡が核生成サイトになり晶析を促進していると考えられます。一方、灰分を含む黒液では、灰が核生成サイトの役割を果たしますが、超音波を照射すると粒子が微細化され、排出しやすくなります。

また本技術は、配管の金属表面を伝搬するラム波によって、汚れそのものを壁面に寄せ付けない物理的効果も発揮します。物理的・化学的な粒子挙動をコントロールすることで、設備を止めずに汚れ対策を行うことができるのです。

【成功事例①】黒液エバポレーターでの抜本的改善と連続運用達成

最もやっかいなファウリングが発生する製紙工場の黒液プロセスで、劇的なメンテナンス削減とプロセス指標の安定化を実現した事例を紹介します。

フィンランドFinnish P&P Company社の製紙プラント事例(Altum社事例) 

フィンランドの製紙プラントでは、7基の直列エバポレーターの末端に超音波システムが導入されました。この工程では固形分が10%から50%超へと跳ね上がり、深刻なカルシウムベースのファウリングが発生していました。

超音波技術を導入した結果、ユニットあたりのエネルギー効率が10%以上改善。さらに特筆すべきは、洗浄回数が1基目で75%、2基目で最大85%以上も減少した点(2) です。配管内が清浄に保たれることで流体抵抗が下がり、ポンプの電流値と流量が安定化するという、現場のオペレーションにおいて極めて重要な成果を記録しています。

出典:
(2) Altum Technologies社Webサイト
https://altumtechnologies.com/references/fouling-prevention-in-evaporators/

三菱製紙株式会社のプラント事例:(HiPEA EcoFUL®)

プラントの多重効用缶の入口配管にHiPEA EcoFUL®が導入されたケースでは、従来、伝熱効率の低下により1〜1.5ヶ月ごとに必要だった薬液洗浄が不要となりました(3)。その結果、「定修間隔と同等の3ヶ月連続運用」を達成しています(4)。生産停止に伴う再起動エネルギーの浪費や、稼働停止中の機会損失を大幅に削減することに成功しました。

出典:
(3) HiPEA EcoFUL Webサイト
https://eng-hipeaecoful.com/case/TPpeDgCE

(4) Altum Technologies社Webサイト

https://altumtechnologies.com/references/mitsubishi-paper-fouling-prevention-in-evaporators/

定期的な洗浄が「当たり前」とされていた工程において、これらの成果はプラントの収益性と保全計画のあり方を根底から向上させます。

【成功事例②】赤液エバポレーターでの蒸発率向上とダイナミックな省エネ効果

ファウリングの予防は、単一設備の改善にとどまらず、熱循環の連鎖効果によってプロセス全体の生産能力(蒸発率)を底上げします。

南アフリカPULP MILL社のプラント事例(Altum社) 南アフリカのパルプ工場にある、3基の効用缶による赤液(Red Liquor)蒸発プロセスでの事例です。第1効用缶から第2、第4、そしてコンデンサーへと蒸気が循環する複雑なプロセスにおいて、カルシウムベースのファウリングが長年の課題となっていました。配管外部から超音波を照射し、ソノクリスタライゼーションを誘発してカルシウムベースの結晶構造を変化させることで、配管への付着を根本から防止しました。

圧倒的な効果 その結果、洗浄間のインターバルが60%以上延長し、エネルギー効率(熱伝達)は実に50%以上も向上しました。伝熱面が常に清浄に保たれたことで蒸発率(生産性)自体が6%向上し、プロセス全体のオペレーション時間が25%増加するという目覚ましい成果を挙げています(5)。超音波による防汚(ソノクリスタライゼーション)が機能したエバポレーターは、既存設備のままでありながら、導入前とは比較にならない高いポテンシャルを発揮します。

出典:
(5) Altum Technologies社Webサイト
https://altumtechnologies.com/references/fouling-prevention-in-red-liquor-evaporators/

既存設備を活かすスマート保全:導入と運用に関するFAQ

HiPEA EcoFUL®による防汚システムは、大掛かりな設備投資やプラントの操業停止を伴わず、極めて現実的かつ安全に導入できます。導入検討時にエンジニアからよく寄せられる疑問にお答えします。

既存設備の配管を切断したり、改造したりする必要はありますか?

いいえ、必要ありません。配管の外部から専用のベルトなどで取り付ける「外付け装置」のため、配管の切断や大掛かりな設備改造は一切不要です。プラントが稼働中であっても取り付け・取り外しが可能です。

防爆エリア(可燃性ガスエリア)での使用は可能ですか?

はい、可能です。世界初のIECEx(国際防爆認証)などを取得した防爆仕様の振動子モデルもラインナップされており、安全基準の厳しいエリアでも安心してご使用いただけます。

配管の材質や厚み、流体の種類が特殊でも対応できますか?

可能です。対象設備の特性(配管の材質・厚み・内部流体の状態など)に合わせて、超音波の発振周波数や出力を最適な状態にソフトウェア制御(マッチング)します。これにより、工業規模のさまざまな鋼管に対して効果的にハイパワー照射できます。

導入後の運用や調整で、現場の負担が増えませんか?

現場の負担は増えません。IoTとSIM通信を活用し、専門の遠隔センターが24時間体制で装置の運転データとプロセスの操業データを監視・制御調整します。現場のエンジニアが都度設定を変える必要はなく、最適な超音波状態が自動で維持されます。

本格導入の前に、自社の設備で効果を確認することはできますか?

はい、可能です。卓上装置やポータブル装置を用いた「ラボ試験(簡易試験)」や、実際の設備の一部に設置する「実機トライアル」を通じて、効果を定量的に検証してから本格導入へ進むステップをご用意しています。

エバポレーターの稼働効率を最大化するために

トラブルが起きてから対処する事後保全から、テクノロジーとプロセスデータを活用した「汚さない」スマート予防保全への移行が、次世代のプラント運営における重要な鍵となります。

エバポレーターをはじめとする過酷な濃縮プロセスにおいて、スケール対策を徹底することは、エネルギー効率の大幅な向上、無駄な蒸気消費の削減によるCO2排出量の低減、そして何よりも連続稼働によるプラント収益の最大化に直結します。

自社プラントへの適用可能性を知るために、まずは以下のリンクより詳細情報をご確認ください。

HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)サービス紹介サイトはこちら

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