ストルバイトの根本対策!独肥料製造Ductor社が洗浄回数を97%削減できた理由

配管・ラインb3

こんな方におすすめ

  • 嫌気性消化やアンモニアストリッピング工程で急成長するストルバイト(MAP)による配管閉塞を防ぎ、ポンプ負荷の増大を抑えたい。
  • 熱交換器にこびりつく強固な無機スケールに、従来の対策では限界を感じている。
  • 頻繁なCIP洗浄(クエン酸・高圧洗浄)によるライン停止に疲弊しており、設備を止めずに使えるオンラインの防汚技術を探している。
  • 大量の薬品消費と人的労力を伴う事後保全から脱却したい。
  • 過酷な無機ファウリング発生環境下でも連続稼働期間を大幅に延ばしたい。

サマリー

バイオガスや廃水処理プロセスにおいて、配管閉塞や熱交換器のスケールを引き起こす代表的な要因の一つがストルバイトのファウリングです。この極めて強固なスケールには、汚れが堆積してから除去する事後保全ではなく、稼働中の設備を止めずに析出そのものを抑える予防保全へのシフトが有効です。

その一つのアプローチが、配管の外側に取り付ける高出力超音波技術です。ドイツのバイオガスプラント(Ductor社)では、フィンランドのAltum Technologies社の超音波ソリューションを導入し、年間の洗浄回数を335回から12回へ(約97%削減)、連続稼働期間を1〜2日から最大8週間へと延ばした事例が報告されています。以下、ストルバイトの発生メカニズムから、事例、超音波技術の作用機序、他分野への応用までを解説します。

ストルバイト(MAP)とは何か ─ 高リスクなプラントの共通点

ストルバイト(MAP:マグネシウムアンモニウムリン酸塩)は、流体中にアンモニア、マグネシウム、リン酸塩が高濃度で共存する環境で形成される、白色〜黄褐色の無機結晶です。特に、嫌気性処理などによって流体のpHが上昇しアルカリ性になる条件で、結晶化が急激に進みます。ストルバイトは析出によって生じる無機スケール(堆積物)であり、これが設備表面に堆積する現象を(結晶化)ファウリングと呼びます。

すべてのプラントでストルバイトが深刻化するわけではありませんが、業界内ではよく知られたリスクです。次の特徴のいずれか、または両方を持つプラントでは、ストルバイトは「偶発的なトラブル」ではなく「プロセスの必然的な結果」として発生しやすくなります。

  • アンモニアストリッピング工程を組み込んでいる。
  • 動物の糞尿、廃水処理汚泥、食品由来の有機廃棄物、屠畜場廃棄物など、高窒素の原料(フィードストック)を処理している。

これらの条件が揃うと流体中で急激な結晶化が進み、設備の安定稼働を脅かします。なお、回収されたストルバイトはリン・マグネシウム・窒素を含むため、肥料原料として再利用する研究も進められています。

なぜCIP洗浄は「間違った問題解決」になり得るのか

過飽和状態のプロセスでストルバイトが結晶化すると、配管内部や熱交換器(特にプレート式熱交換器)、ポンプの表面に最大10mmもの強固なスケールとして堆積します。これにより圧力損失の増大、流量低下、熱伝達効率の悪化が生じます。

従来、ストルバイト対策の主流は、クエン酸などを用いたCIP(Clean-in-Place)洗浄と手作業による高圧洗浄の組み合わせでした。しかしスケール成長が速い過酷なプロセスでは、1〜2日おきにラインを停止して洗浄する必要があります。

ここで見落とされがちなのは、プラントの安定稼働が頻繁なCIP洗浄に依存している場合、課題設定そのものが間違っている可能性がある、という点です。頻繁な洗浄は、生産時間の損失、過剰な薬品消費、回避できたはずの設備摩耗といった「見えないコスト」を押し上げてしまうからです。汚れの蓄積を待って薬品や人力で対処するアプローチは、流体中の粒子形成(析出)が制御されていないことの裏返しとも言えるのです。

【導入事例】Ductor社が洗浄回数を97%削減した方法

事後保全の限界を打破した事例として、ドイツのDuctor社のケースを紹介します。同社は農業由来の廃棄物を処理し、バイオガスと持続可能な有機液体窒素肥料を製造・回収する微生物学的なターンキープラントを運営しています。

導入前の状況

同プラントは鶏糞などの高窒素原料を用い、嫌気性消化とアンモニアストリッピングを行っています。まさにストルバイト形成に近い条件であり、熱交換器やパイプラインには最大10mm厚のストルバイトが堆積していました。

稼働を維持するため1〜2日ごとにCIP洗浄を実施し、1回あたり約2時間のダウンタイムが年間約335回発生するという、洗浄と汚れのループに陥っていました。

導入した技術

同社は、汚れが形成された後に除去するのではなく、粒子が液中でどう形成・挙動するかに働きかけるアプローチを採用しました。クリティカルな熱交換器の上流側配管の外部に高出力超音波デバイスを設置し、ソフトウェアによる精密制御のもと、プロセスを止めず・改造せずに運用しています。

成果

超音波の作用で固形物を表面に付着させず液中に懸濁させた結果、配管内はほぼクリーンな状態を維持し、以下の成果が報告されています。

  • 連続稼働期間の延長:洗浄なしの連続稼働が1〜2日から最大8週間へ。

  • 洗浄回数の約97%削減:年間335回必要だった洗浄サイクルが12回へ減少。

  • ダウンタイムの激減:洗浄のためのダウンタイムが「1日2時間」から「月2時間」へ。

  • 薬品使用量の削減:クエン酸消費量を年間6トン超削減。これに伴いCO2排出量も削減。

  • プロセスの安定化:アンモニアストリッピングの性能と、システム全体の信頼性が向上。

導入企業であるDuctor社のMiitrei Yli-Puntari氏は、次のようにコメントしています。

「本ソリューションにより、稼働時間を大幅に延ばし、メンテナンスの必要性と薬品使用を削減できました。協業もスムーズで、Altum社のサービスに非常に満足しています。」
引用元:https://altumtechnologies.com/increased-operation-uptime-in-a-biogas-plant-with-power-ultrasound/

外付けの超音波はどのようにスケールを防ぐのか

技術提供元のAltum社によれば、同社のソリューションは配管の外側から超音波場を形成し、固形物を配管表面に付着させず流体中に懸濁させたまま保つことで、熱交換器や配管へのスケール堆積を防ぎます。制御はソフトウェアで行われ、超音波の出力と照射位置を精密に調整するとされています。

この「表面に付着させない」効果を生む物理的な作用機序としては、ハイパワー超音波・超音波晶析(sonocrystallization)の分野で一般に次の要素が知られています。以下は一般原理に基づく説明であり、特定製品の内部動作を保証するものではありません。

  1. 配管壁面の微細振動(ガイド波/ラム波):外部から入力された超音波が金属管壁を伝搬し、壁面をミクロに振動させることで、結晶が壁面に定着しにくくなると考えられます。

  2. 液中での核生成促進(キャビテーション等):超音波は液中で微小気泡の生成・崩壊(キャビテーション)や局所的な圧力変動を引き起こし、これが結晶核の生成を促すとされます。壁面ではなく流体側で微結晶化が進むことで過飽和度が下がり、壁面でのスケール成長が抑えられると説明されます。

  3. 結晶の微細化・分散:キャビテーション崩壊時のマイクロジェットやせん断力により、結晶が凝集・肥大する前に微細化され、流体中に分散したまま下流へ流されると考えられます。

なお、キャビテーションは条件によっては配管の壊食(エロージョン)を招く要因にもなり得るため、出力と照射位置の適切な制御が前提となります。Altum社がソフトウェア制御を強調するのは、この精密な作用のコントロールが成果を左右するためと考えられます。

バイオガス以外への応用

この高出力超音波技術の応用範囲は、ファウリング防止だけではありません。バイオガス分野では、嫌気性消化の前に原料(フィードストック)の細胞壁を破壊して均質化(ホモジナイズ)し、発酵効率や固液分離の性能を高める用途も模索されています。

また、Altum社は化学、食品・飲料、製紙、鉱業、エネルギーなど複数の産業を対象に実績を公開しています。化学プラントでのポリマー凝集に伴う熱交換器の汚れ対策や、食品・飲料分野の高粘度流体(トマトペースト等)の加熱・殺菌工程における有機物の焦げ付き対策など、設備の連続稼働を延ばす用途が挙げられます。

まとめ──プラント保全の次のステップ

ストルバイトに代表される過酷なスケール環境では、「汚れてから洗う」事後保全は持続可能とは言いにくくなっています。Ductor社の事例が示すように、外付けの超音波技術で流体の振る舞いをコントロールし、析出そのものを抑える予防保全に切り替えることは、選択肢の一つとして検討に値します。

頻繁な洗浄作業から脱却し、設備を止めずに汚れ対策を行うことで、連続稼働の最大化とコスト・環境負荷の低減を同時に狙うこと。これが次世代のプラント運営における競争力につながるはずです。

Altum社は自社の防汚コンセプトを「ZPD(Zero Process Downtime:プロセス停止ゼロ)」と呼んでいます。Ductor社の事例では完全なゼロ停止には至っていませんが(月2時間まで低減)、その理念に迫る成果が示されています。

なお、日本国内においては、日鉄エンジニアリング株式会社がAltum Technologies社とのパートナーシップを通じ、この高出力超音波技術を用いたスマート保全ソリューション「HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)」を展開しています。

自社の設備における防汚効果や導入の妥当性を検討される際は、ぜひ以下のリンクより詳細な情報をご参照ください。

HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)サービス紹介サイトはこちら

よくある質問(FAQ)

ストルバイト(MAP)はどんなプラントで問題になりますか? 

アンモニアストリッピング工程を持つプラント、または鶏糞・家畜糞尿・廃水処理汚泥・食品廃棄物・屠畜場廃棄物などの高窒素原料を処理するプラントで、リスクが高くなります。嫌気性処理によってpHがアルカリ側に傾くと結晶化が進みやすくなります。 

なぜ超音波は配管の外側からでもスケールを防げるのですか?

超音波が管壁を伝搬して壁面を微細に振動させ、さらに液中の粒子形成に作用することで、固形物が表面に付着せず液中に懸濁したまま流れるためと説明されています。設備の内部に手を入れず、稼働を止めずに施工できる点が特徴です。

CIP洗浄はもう不要になりますか?

完全にゼロにできるとは限りません。Ductor社の事例では、洗浄回数が年間335回から12回へ、ダウンタイムが1日2時間から月2時間へと大幅に減少しましたが、定期的な洗浄は残っています。狙いは「洗浄をなくす」ことではなく「大幅に減らす」ことです。

導入によってどの程度のコスト・環境負荷の削減が見込めますか?

Ductor社の事例では、クエン酸消費量を年間6トン超削減したほか、洗浄に伴うダウンタイムと薬品使用の削減、CO2排出量の削減が報告されています。効果はプロセス条件により異なるため、個別の評価が必要です。

バイオガス以外の用途はありますか?

あります。化学プラントの熱交換器の汚れ対策、食品・飲料の加熱・殺菌工程での焦げ付き対策、製紙のエバポレータなど、複数の産業でファウリング防止の用途が公開されています。

出典・参考

本記事のDuctor社事例および技術情報は、技術提供元であるAltum Technologies(フィンランド)の公開資料に基づいています。

  • Altum Technologies「Ductor's Biogas Plant Cut Cleaning Cycles by 97%(事例)」

https://altumtechnologies.com/references/ductor-struvite-control-in-biogas/

  • Altum Technologies「How Ductor Reduced Cleaning Downtime by 97% – Managing Struvite in Biogas Plants」

https://altumtechnologies.com/ductor-struvite-fouling-biogas-cleaning-downtime/

  • Altum Technologies「Increased Operation Uptime in a Biogas Plant with Power Ultrasound」

https://altumtechnologies.com/increased-operation-uptime-in-a-biogas-plant-with-power-ultrasound/

  • Altum Technologies「Struvite Fouling: Causes & Fixes」

https://altumtechnologies.com/struvite-explained-causes-problems-and-solutions-for-industrial-efficiency/



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