こんな方におすすめ
- 流体(ブラインや黒液、高粘度液など)の温度・濃度変動により配管内にスケールが析出・結晶化し、プラントの停止に頭を抱えている
- 配管を開けての高圧洗浄や物理的な切削作業に多大な工数と機会損失が発生し、配管閉塞を防止する有効な技術やソリューションを探している
- 汚れによる流量低下やポンプへの負荷増大がライン全体のボトルネックになり、プロセスの歩留まりが悪化している
- 設備を止めずに汚れ対策を行いたいが、薬液洗浄による設備ダメージや廃液処理の手間も避けたいと考えている
- 「汚れてから洗う」というイタチごっこをやめ、スケールを根本から予防できるシステムを探している
サマリー
プラントにおける配管閉塞は、流量の低下を招き、定期的な生産停止と洗浄作業による機会損失を強いる、現場最大のボトルネックの一つです。この課題に対する有効な解決策が、設備を稼働させたまま配管の外側から超音波を照射し、汚れそのものを「寄せ付けない」予防保全という考え方です。
実際に、カナダの肥料大手であるNutrien社は、ブライン(塩水)の塩析出による配管閉塞に悩まされ、ほぼ毎週のようにラインを停止して洗浄を行う運用を強いられていました。しかし、高出力のオンライン超音波技術を導入し、「汚れてから洗う」事後保全から「汚れにくくする」予防保全へと転換することで、洗浄のためのメンテナンス要件を約75%削減することに成功しています(Altum社の海外事例)。
この超音波技術は、高圧水洗浄・機械的切削・化学(薬液)洗浄に代わる選択肢として注目されています。国内では、日鉄エンジニアリングがこの技術をスマート保全サービス「HiPEA EcoFUL®(ハイパーエコフル)」として提供しています。本記事では、多くのプラントエンジニアを悩ませる配管閉塞の主な原因とメカニズムを整理したうえで、Nutrien社が劇的な稼働率向上を実現した超音波予防保全の仕組みと成果を詳しく解説します。
配管におけるファウリングの脅威と生産性への影響
プラントにおいて、配管は黒液、ブライン(塩水)、油といった流体を運ぶ、文字どおりの生命線です。しかし、炭酸カルシウムや塩の結晶などのファウリング(汚れ・スケール)が配管内に発生すると、配管径が徐々に狭まり、プロセス全体に連鎖的な悪影響を及ぼします。具体的には、流量効率の低下と圧力損失の増大、熱伝達効率の悪化、ポンプへの過剰な負荷、そして洗浄のための頻繁な生産停止による機会損失です。さらに、伝熱効率やエネルギー効率の低下は、エネルギー消費量とCO₂排出量の増加にも直結します。
従来、こうした汚れを取り除くには、ラインを完全に停止したうえで、高圧水洗浄、機械的切削、あるいは環境負荷の高い化学洗浄を行うしかありませんでした。これらは多大なメンテナンスコストとダウンタイム(生産の機会損失)を生むだけでなく、作業員の安全リスクや設備寿命の低下にも直結します。「汚れたら止めて洗う」という事後対応そのものが、生産性を押し下げる構造的な要因になっているのです。
配管閉塞・汚れが発生する主な原因
配管内でスケールや汚れ(ファウリング)が発生するメカニズムは、その発生原理によって分類できます。配管で問題となる主なものは、次の5種類です。
| メカニズム | 発生現場の状況 | 主な影響 |
|---|---|---|
| ① 析出・結晶化(スケーリング) (例:炭酸カルシウム、塩、ストルバイト) |
溶解した無機塩が、プロセス内の温度・濃度変動で過飽和となり、配管内壁で結晶化する | 内壁への硬固なスケール固着、急速な流量低下、熱伝達効率の悪化 |
| ② 粒子状物質の堆積 (例:砂、微粒子、スラリー固形分) |
流体中の懸濁固形物が、流速の遅い箇所・バルブ周辺・配管の曲がり部で沈降・凝集・滞留する | 局所的な配管閉塞、ポンプ効率の著しい低下、圧力損失の増大 |
| ③ 腐食ファウリング (例:錆/酸化鉄) |
配管の壁面そのものが腐食し、生成した腐食生成物が流路内に堆積・付着する | 流路の狭窄、流動抵抗の増加、配管の劣化・寿命低下 |
| ④ 生物付着(バイオフィルム) | 冷却水・用水系などで微生物が繁殖し、壁面に粘性の生物膜(バイオフィルム)を形成する | 流路の狭窄、伝熱・流量の低下、製品汚染・衛生リスク |
| ⑤ 凝固・固化 (例:ワックス/パラフィン) |
油・原油ライン等で、高融点成分が低温の壁面に触れて固化・析出する | 流路の狭窄・閉塞、流動性の低下、再起動時の負荷増大 |
※このほか、壁面での化学反応によるファウリング(加熱・反応プロセスでの焦げ付き、ポリマー付着など)も生じますが、加熱工程カテゴリの別記事で詳述します。
「配管の外からスケールを防ぐ」超音波の仕組み
先進的なプラントが導入を進めているのが、配管の外側にトランスデューサー(振動子)を取り付けるだけで、稼働中の設備を止めることなくスケールを根本から予防する、高出力のオンライン超音波技術です。配管に照射された超音波は、固体や液体を伝搬する過程で、横波 → 縦波 → キャビテーション → マイクロジェットという複数の物理現象を引き起こします。これらを流体の性質やプロセスに応じて利用することで、以下の効果により汚れの付着を抑制します。

出所:日鉄エンジニアリング株式会社 スマート保全サービス資料
付着抑制(物理的効果)|横波(ラム波)
振動子から発せられた超音波は、まず配管の金属表面をラム波として伝搬し、表面そのものを微細に振動させます。この微小な振動が、汚れや結晶を壁面に寄せ付けず、固着を継続的に防ぎます。
晶析促進(化学的効果)|キャビテーション
金属表面の振動が内部の液体に伝わると、液体を圧縮・膨張させる粗密波(縦波)が発生します。この圧力変化によって液中に生じる微細な気泡(キャビテーション)が核生成サイトとなり、壁面ではなく液中での結晶化を促進します。その結果、壁面付近の局所的な過飽和度が下がり、スケール成分が壁面に析出するのを根本から抑制します。
分散・微細化(物理的効果)|縦波のせん断力/マイクロジェット
縦波が生み出す強いせん断力と、気泡が圧壊する際に生じるマイクロジェットは、配管内の凝集体を分散・微細化する働きを持ちます。これにより、固形物が大きく成長して堆積・付着するのを防ぎ、局所的な閉塞を抑えます。
稼働を止めない非侵襲性
これらの効果を得るために、配管の切断や溶接は一切必要ありません。プロセス流体や運転条件を変更せずに後付けが可能で、材質や流体特性に合わせてソフトウェアが最適な照射条件(低周波数〔20kHz〕域での強力なパワー照射)を制御します。さらに、24時間体制で照射状態を監視・調整することで、安定した予防効果を維持します。
これらの作用は、汚れの種類によって効き方が異なります。「晶析促進」は①析出・結晶化(スケーリング)に、「分散・微細化」は②粒子状物質の堆積に直接対応し、キャビテーションの脱気作用は④生物付着(バイオフィルム)の抑制にも寄与します。Nutrien社の事例は、まさにこの①と②に対する効果を実証したものです。
一方、③腐食や⑤凝固については、腐食反応やワックスの析出そのものを止めるわけではなく、ラム波による「付着抑制」によって、生じた付着物が壁面に固着するのを抑える役割が中心となります。いずれの場合も、汚れの発生メカニズムを正しく見極めたうえで、狙う効果・照射位置・出力条件を設定することが重要です。
従来の洗浄と超音波予防保全の違い
従来の洗浄と超音波による予防保全のアプローチの違いを整理すると、次のようになります。
| 観点 | 事後保全(従来の洗浄) | 予防保全(超音波) |
|---|---|---|
| アプローチ | 汚れてから止めて洗う | 稼働させたまま汚れを軽減する |
| 生産停止 | 洗浄のたびに必要 | 不要(連続稼働を維持) |
| 設備・環境負荷 | 薬液ダメージ・廃液処理・切削摩耗 | 薬剤・廃液なし、外付けで非侵襲 |
※化学洗浄・高圧水洗浄・機械的切削との詳細な技術比較は、比較カテゴリの別記事で扱います。
詳細導入事例|肥料大手Nutrien社(Altum社・海外事例)
以下は、この超音波技術を開発したAltum社(フィンランド)の導入事例です。国内では、日鉄エンジニアリングが同技術をライセンス導入し、スマート保全サービス「HiPEA EcoFUL」として提供しています。
Nutrien社は、肥料の原料であるカリウム(ポタッシュ)を生産するプラントで、ブライン(塩水)溶液を送るポンプパイプラインの配管閉塞という課題を抱えていました。大きな温度変動によってブライン溶液から塩が析出し、配管内で急速に結晶化・スケール化していたためです。
配管の閉塞を防ぐため、同社はほぼ毎週のようにラインを止めて配管の洗浄を行うという、極めて負荷の高い運用を強いられていました。頻繁なライン停止は、プロセスの回収率(歩留まり)にも深刻な悪影響を及ぼしていました。
そこで、設備を稼働したまま配管の外周に超音波トランスデューサーを設置し、汚れが激しい局所エリアに超音波フィールドを形成して、スケール成分が内壁に付着するのを防ぐ設定で連続照射を実施しました。

出所:Altum社サイト
導入後の成果は、次のとおりです。
- 停止頻度の大幅削減:超音波未処理の配管・ポンプと比較して、メンテナンス要件(洗浄のためのライン停止)を約75%削減
- 生産性・歩留まり向上:突発的・定期的なライン停止が激減し、プロセス全体の稼働率と回収率が向上
- 波及効果:配管閉塞の解消によってポンプ効率が設計レベルに維持され、エネルギー消費の最適化や設備寿命の延長を実現
※効果は設備の運転条件・流体・原料などによって異なります。
HiPEA EcoFUL®|国内で導入できる「汚さない」スマート保全サービス
国内では、日鉄エンジニアリングが2021年にAltum社とライセンス契約を締結し、Altum社の超音波照射技術と、同社が長年培ってきた産業実装技術を組み合わせることで、スマート保全サービス「HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)」を実現しました。主な特徴は次のとおりです。
- 設備改造が不要な外付け装置(脱着が容易で、防爆対応モデルもあり)
- 材質・流体に合わせたソフトウェア制御による最適照射
- 監視センターによる24時間の遠隔監視・調整
- メンテナンス込みの定額型サービス(設備保全の新しいアウトソースのかたち)
「汚れたら洗う」から「汚れない状態をつくる」へ。設備を止めない配管メンテナンスをご検討の際は、HiPEA EcoFULの試験導入をぜひご相談ください。
FAQ
-
設備を止めずに配管のスケール・閉塞を防げますか?
はい。配管の外側に振動子を取り付け、稼働中に超音波を照射するため、生産を止めずに汚れの付着を抑制できます。配管の切断・溶接は不要です。
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化学(薬液)洗浄や高圧水洗浄を使わずに配管閉塞を防げますか?
可能です。超音波による予防保全は薬剤を使用しないため、廃液処理や薬液による設備ダメージが発生せず、これらの洗浄手法の代替となります。
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既設の配管に後付けできますか?
できます。外付け型のため、プロセス流体や運転条件を変えずに、既設配管へ後付けが可能です。
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どのくらい洗浄頻度を減らせますか?
Altum社のNutrien社事例では、メンテナンス要件を約75%削減した実績があります。ただし、効果は設備の運転条件・流体・原料によって異なります。
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どんな汚れ(ファウリング)に有効ですか?
無機塩のスケーリング(炭酸カルシウム・塩・ストルバイト等)や、固形物・凝集体の堆積などに有効です。
まとめ
配管閉塞は、流量低下と生産停止を通じて、プラントの稼働率と歩留まりを直接押し下げます。配管の外側から超音波を照射する予防保全は、「付着抑制(ラム波)」「晶析促進(キャビテーション)」「分散・微細化(縦波・マイクロジェット)」という複数の作用によって汚れを根本から寄せ付けず、Nutrien社では洗浄のためのライン停止を約75%削減しました。
国内では、この技術が日鉄エンジニアリングのスマート保全サービス「HiPEA EcoFUL」として導入可能です。「汚れてから洗う」イタチごっこから脱却したいプラントにとって、有力な選択肢となるでしょう。
自社プラントへの適用可能性を知るために、まずは以下のリンクより詳細情報をご確認ください。
HiPEA EcoFUL(ハイパーエコフル)サービス紹介サイトはこちら
