加熱殺菌プロセスの焦げ付き防止|食品・飲料製造を止めない汚れ対策

加熱工程

こんな方におすすめ

  • 食品・飲料プラントの現場において、品質(衛生レベル)の維持と稼働率向上の両立に課題を感じている。
  • 頻繁なCIP(定置洗浄)や手作業での分解洗浄でラインがたびたび止まり、生産停止による機会損失が起きている。
  • ダイレクトスチームインジェクション等の加熱工程で、糖やタンパク質が炭化して製品に混入しないか常に不安がある。
  • 食品製造で高粘度流体や脂肪分の固着(ファットファウリング)に悩まされているが、高圧洗浄で設備を止めたくない。設備を止めずに汚れ対策ができるオンラインの防汚ソリューションを比較・検討したい。
  • 『汚れたら洗う』事後保全から脱却し、プラント汚れ防止のために、そもそも汚れを根本から予防できるソリューションには何があるのか知りたい。

本記事では、食品特有の頑固な汚れ(Food Soil)が発生するメカニズムと、超音波技術を用いてラインを止めずに汚れを予防するアプローチについて詳しく解説します。

記事要約

食品・飲料業界における加熱殺菌プロセスでは、糖分やタンパク質が炭化する「焦げ付き」や脂肪分の固着といった「食品ソイル(Food Soil)」が深刻な問題を引き起こします。これらが配管内部に堆積すると、熱効率の低下や異物混入といった重大な品質不良を招きます。従来のCIP(定置洗浄)や手作業での高圧洗浄をはじめとする事後保全では、頻繁な設備停止が避けられず、完全な除去も困難です。

この課題に対し、発想を「汚れてから洗う」事後対応から「そもそも汚れを付けない」予防保全へ転換するのが、稼働中の配管外部から高出力超音波を照射し、汚れの付着そのものを抑制する「オンライン防汚テクノロジー」です。設備を止めずに汚れ対策を行うことで、焦げ付きの付着を防止し、生産能力の最大化と食品ロス削減を同時に実現することが可能になります。

食品・飲料プラントにおける焦げ付き防止の必要性

食品・飲料プラントでは、原料由来の有機物(糖、タンパク質、脂肪分)が汚れ(食品ソイル)となって配管内部に堆積し、流量の低下やラインの停止を引き起こします。

特に加熱殺菌プロセスにおいては、高温の蒸気や熱水を使用するため、急激な温度変化によるタンパク質の熱変性や糖分の炭化による「焦げ付き(Burnt-in)」が発生しやすくなります。この焦げ付きが剥がれ落ちて最終製品に混入(コンタミネーション)すれば、重大な品質不良や大規模な製品リコールに直結しかねません。したがって、加熱殺菌の焦げ付き防止は、食品プラントにおける品質管理と歩留まり向上の生命線と言えます。

食品ソイルの種類と従来手法(CIP)の限界

食品・飲料業界の汚れ対策は、「CIP(定置洗浄)と手動洗浄の組み合わせ」によって衛生状態を確保するのが長年の方法でした。しかし、食品ソイルの特性を考慮すると、この手法には大きな限界があります。

食品ソイル(Food Soil)の主な種類

種類 特徴
焦げ付き(Burnt-in) 加熱殺菌など高温での熱処理時において、糖やタンパク質が配管や熱交換器の伝熱面に強固にこびりつく現象です。
脂肪の固着(ファットファウリング) 食肉加工や乳製品などの高粘度流体が装置内に付着・堆積することで発生し、基準重量での切り出し不良などを引き起こします。
無機スケール 流体中のカルシウムやマグネシウムなどの無機成分が過飽和状態となり、結晶化して配管表面に成長する現象です。

CIP(定置洗浄)が抱える3つの課題

現在、食品・飲料プラントにおける汚れ防止対策はCIPが多く用いられますが、以下の課題に直面しています。

課題 詳細
洗浄力の限界 通常のアルカリ・酸を用いたCIP洗浄では、強固に炭化した焦げ付きや、苛性ソーダが使用できない箇所の脂肪分を完全に除去することが難しいケースが多々あります。
構造上の死角 バルブ周辺や曲がり管など、複雑な配管設計では薬液の機械的洗浄効果が隅々まで届かず、洗浄不良による細菌繁殖リスクが残ります。
莫大なダウンタイムとロス 「汚れてから洗う」事後保全であるため、長時間のアイドリング(生産停止)が発生します。生産能力が低下するだけでなく、ラインに滞留した原料の劣化や廃棄ロス(食品ロス)が生じます。

設備を止めずに汚れ対策ができるオンライン超音波防汚技術

これらの課題を根本から覆すのが、設備を稼働させたまま外部から高出力の超音波を照射し、プラント汚れ防止を実現するオンライン防汚テクノロジーです。日鉄エンジニアリング株式会社が展開する「HiPEA EcoFUL®(ハイパーエコフル)」は、フィンランドのAltum Technologies社の超音波照射技術をベースにしたスマート保全サービスで、配管を切断したり設備を大規模に改造したりすることなく、既存配管の外周に振動子を取り付けるだけで導入できるのが最大の特徴です。

超音波による食品ソイル防止のメカニズム

焦げつきを根本から予防できるシステムとして、超音波は以下の物理的・化学的アプローチで食品ソイルに作用します。

アプローチ 詳細
焦げ付きの抑制(付着抑制) 配管の金属表面を伝わる超音波の横波(ラム波)が微細な振動を生み出し、焦げ付きの原因となる有機物を壁面に寄せ付けません。これにより、コンタミネーションから製品を保護します。
脂肪分の乳化(Emulsification) キャビテーション(微小な気泡の発生と圧壊)が、密度の異なる水分と油分を激しく揺らして混合する「乳化」を促します。これにより脂肪分の配管・装置への固着を防ぎます。
分散・微細化 超音波の縦波が流体中に強いせん断力を生み出し、凝集物を分散・微細化します。詰まりやすい大きな汚れの塊が生じるのを防ぎ、高粘度流体の配管閉塞を防止します。
化学洗浄(CIP)との相乗効果 超音波が薬液の機械的な洗浄効果を増幅させ、従来は届きにくかった複雑な配管設計の死角にまで洗浄効果を行き渡らせます。

なお、キャビテーションは過大になると配管壊食(エロージョン)の要因にもなり得ますが、ソフトウェア制御により対象の流体・設備に応じて出力を最適化することで、設備を傷めずに付着抑制効果を得られる点も、産業利用における重要なポイントです。

以下ではオンライン超音波技術を導入し大きな改善を遂げた食品プラントの2事例と、導入にあたりよくある質問をご紹介します。

導入事例|加熱殺菌プロセスにおけるトマトペーストの焦げ付き防止

導入前の現場課題

項目 詳細
対象プロセス トマトペーストの加熱殺菌プロセス
対象設備 加熱殺菌配管(ダイレクトスチームインジェクション)
発生していた問題 吹き込み蒸気の高温によってトマトペーストの有機分が配管内に激しく焦げ付いていました。この焦げが剥がれて最終製品に混入し、品質不良が発生していました。
保全の負担とロス これを防ぐために1週間ごとに薬剤で焦げを除去する洗浄が必須となっていました。頻繁な生産停止(ダウンタイム)により生産リードタイムが長引き、原料の劣化が問題となっていました。

オンライン超音波技術の導入と成果

加熱殺菌配管(ダイレクトスチームインジェクション)の本体外側に高出力の超音波振動子を設置し、生産稼働中も常時超音波を照射する体制を構築しました。

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成果 詳細
設備稼働率の劇的改善 週1回の薬剤洗浄が不要となり、1シーズン(3ヶ月間)の連続稼働を達成しました。
品質不良ゼロ 配管内の焦げ付きが根本から防止されたことで、製品への焦げの混入がなくなり、品質不良がゼロになりました。
原料ロス(食品ロス)とコストの削減 洗浄のための生産停止がなくなり生産期間が短縮されたことで、原料の劣化が抑制され、期間作業員の削減にもつながりました。

※本事例は海外パートナー(Altum Technologies社)による導入事例です。効果は設備運転条件や原料などによって異なります。

導入事例|食肉加工工場における脂肪付着の抑制

国内でも、ハンバーグ製造工場のホッパー内に付着するミンチ肉の脂肪分に対してHiPEA EcoFULのトライアルが行われています。導入前は脂肪付着により基準重量での切り出しができなくなるたびに生産を止めて分解洗浄を行っていましたが、超音波による付着抑制で分解洗浄による一時生産停止がなくなり、製造時間の短縮を実現。ラインから排除される個数が減ることで、精肉の品質劣化防止や食品ロスの削減も期待されています。

よくある質問(FAQ)

CIP洗浄の回数を減らしても、食品の衛生レベル(サニタリー性)は保たれますか?

超音波による付着抑制効果によって「細菌の温床となる汚れ(Food Soil)」自体を配管内に作らせないことが、衛生状態の維持に寄与します。また、超音波の化学的な効果として、水分子の分解によるラジカル反応に伴う殺菌効果も報告されており、化学消毒と組み合わせることでより効率的な衛生管理が期待できます。実際の洗浄頻度は、対象プロセスの衛生要件に応じて検証のうえ設定します。

既存の食品ライン配管に後付けする場合、設備の改造や長時間のライン停止は必要ですか?

不要です。配管の外周に装置をクランプする外付け方式のため、大規模な配管の切断、溶接作業、設備改造なしに導入が可能です。生産工程を変えずに導入できる簡易性は、国内の導入企業からも評価されています。

対象となる汚れの種類を教えてください。

ダイレクトスチームインジェクション等でのタンパク質・糖分の炭化(焦げ付き)をはじめ、ホッパー等における高粘度の脂肪分の固着、さらにはカルシウム等による無機スケールの結晶化まで、食品工場特有の幅広い汚れに対応します。

「汚れたら洗う」から「汚れを付けない」プラントへ

食品・飲料プラントにおける焦げ付き対策は、従来の「汚れてから洗う(CIP)」という事後保全のアプローチだけでは、品質リスクの排除と生産能力の最大化に限界があります。

加熱殺菌の焦げ付き防止技術として、超音波を活用したオンライン防汚テクノロジーを導入し、予防保全へと発想を転換することは、ダウンタイムの削減、人手不足の解消、そして食品ロスの削減という、多大な経営的リターンをもたらします。

設備を止めずに汚れ対策を実現し、安全で高効率な次世代のプラント運営へシフトするための検討を始めてみてはいかがでしょうか。

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