化学プラントの無機・有機ファウリング対策|発生原因から設備を止めない最新ソリューションまで

防汚・保全の基礎3 (1)

こんな方におすすめ

  • 高粘度流体や反応を伴うプロセスラインで、突発的な配管閉塞を防止する有効な技術を探している
  • 熱処理工程で、ポリマーの凝集・重合や焦げ付きを防止したい
  • 熱交換器の汚れ防止(ファウリング対策)で、薬液洗浄による設備腐食や有毒ガス発生といった従来手法の限界に直面している
  • 生産を絞らずに、設備を止めずに汚れ対策ができるオンラインの防汚技術を比較・検討したい
  • リン酸などの無機スケールと有機ポリマーの混在などの複雑な汚れを、根本から予防できるシステムを探している


化学プラントでは、たった一つの熱交換器や配管の汚れ(ファウリング)が、ライン全体の停止に直結します。本記事では、有機物と無機物が混在する化学プロセス特有の汚れのメカニズムを整理し、薬液洗浄に伴う設備ダメージや有毒ガスのリスクを避けながら、設備を止めずに汚れ対策を行う最新のオンライン防汚テクノロジーを解説します。

記事要約

化学・石油化学プラントにおける汚れ対策の要点は、生産ライン全体の連続稼働を維持することにあります。化学プラントはすべてのプロセスが連動しているため、一つのプロセスユニットの閉塞や効率低下が、プラント全体の停止や生産効率低下に直結します。「汚れてから薬液で洗う」という事後保全は、莫大な機会損失を生むだけでなく、設備腐食や有毒ガス発生といった深刻なリスクを伴います。

これに対し、稼働中の設備の外側からハイパワー超音波を常時照射する「オンライン防汚」は、無機スケールの結晶核生成抑制や有機ポリマーの分解・分散といった物理的・化学的な作用によって、汚れの付着そのものを抑制します。設備改造が不要で、可燃性ガスエリアでも使用可能な防爆認証を取得しているソリューションもあるため、既存設備を止めることなく、リスクを抑えた形で導入できます。

化学プラント特有のファウリングリスク

化学プラントの生産効率は、全設備の無停止稼働によって決まります。一つの熱交換器の汚れが後工程へ波及し、全体の生産レート低下を招くことで、プラント全体のボトルネックになりかねません。

化学プロセスの汚れ(ファウリング)は、次のように複雑です。

  • 有機ファウリング:ポリマーの熱凝集や重合、伝熱面での焦げ付き
  • 無機ファウリング:リン酸をはじめとする無機塩(スケール)の析出・付着
  • 両者の混合:有機物と無機物が同時に堆積し、除去も予測も難しい

汚れによる熱効率の低下や圧力損失の増大は、生産量の減少やエネルギー消費の増大に直結します。実際、主要先進国における熱交換器の汚れに起因する損失は年間約5,500億円、CO₂換算で約8,800万トンにのぼると報告されています(出典1・2)。

設備を止めずに汚れ対策を行う技術

外部から照射するハイパワー超音波は、化学特有の「スケール析出」や「ポリマー重合」に対し、物理的・化学的の両面から根本にアプローチできます。仕組みのポイントは次のとおりです。

特徴 詳細
設備改造不要の外付け・オンライン防汚 稼働中の配管の外側に振動子を取り付けるだけで導入でき、可燃性ガスエリアでも使用可能な防爆認証を取得している。
無機スケール対策(結晶核生成抑制+付着防止) キャビテーションによって液中での結晶核生成をコントロールし、金属表面を伝わる横波(ラム波)が汚れを壁面に寄せ付けないことで、配管閉塞を防ぐ。
有機ポリマー・焦げ付き対策(分解+分散) キャビテーション内の熱がポリマーの結合を切断し、縦波が生む強いせん断力が凝集物を分散・微細化することで、伝熱面での焦げ付きを抑制する。

さらに、超音波が生む物理的・化学的効果と、化学プラントでの意義を整理すると次のとおりです。

分類 効果 作用(源となる超音波現象) 化学プラントでの意義
物理的効果 付着抑制 横波(ラム波)が金属表面を微細に振動させる 汚れを壁面に寄せ付けず、付着・焦げ付き・配管閉塞を防ぐ
物理的効果 分散・微細化 縦波が生み出す強いせん断力 詰まりやすい大きな凝集物が生じるのを防止する
物理的効果 粒子整列 波の揺れが小さい場所に固形物を集める 固形物を壁面から遠ざけ、付着を防ぐ
化学的効果 結晶核生成抑制 キャビテーション(気泡の生成・圧壊) 析出するスケール(無機塩)の付着を抑制する
化学的効果 ポリマー分解 キャビテーション内の熱がポリマーの結合を切断 高分子の重合・凝集を抑え、伝熱面の焦げ付きを防ぐ

超音波による設備を止めずに汚れ対策ができるオンラインの防汚・洗浄テクノロジー

画像出典:日鉄エンジニアリング株式会社 スマート保全サービス紹介資料

導入3事例|化学プロセスの強固な汚れをどう解決したか

リン酸スケールから合成ゴム溶剤のポリマー凝集、有毒ガスリスクまで、化学プラント特有の深刻な課題が実際に解決されています。

ここでは国内外の実例を紹介します。

事例1|石油化学プラント:蒸留塔リボイラーの有機ポリマー凝集抑制

項目 詳細
業界 石油化学
流体 / 設備 合成ゴム溶剤 / 蒸留塔リボイラー(S&T熱交換器)
設置場所 チューブ側入口配管
導入前の課題 ポリマーがチューブ内で凝集し、熱交換効率が徐々に低下。定期修繕に加えて中間時期にも設備を停止して洗浄しており、洗浄時は生産レートを絞るため機会損失が発生していた。
導入後の成果 伝熱面へのポリマー付着を抑制し、熱交換効率(U値)が約30%改善。設備を止めずに連続稼働を維持できるようになった。

事例2|化学メーカー:薬液洗浄による有毒ガスと設備ダメージの回避

項目 詳細
業界 化学
導入前の課題 汚れの付着に伴う洗浄で薬剤を使用しており、設備がダメージを受けるとともに有毒ガスが発生。汚れが付きやすい冬季には突発的な洗浄も必要だった。
導入後の成果 薬剤を使用せずに汚れの付着を抑制し、突発的な薬液洗浄そのものが不要に。設備ダメージと有毒ガス発生リスクを同時に解消し、設備停止・立上げに伴うエネルギー使用量も削減。安定操業を実現した。

事例3|海外(フィンランド)化学メーカー:移送ラインの無機スケール(リン酸)を稼働中に除去

項目 詳細
業界 化学(海外パートナー事例)
流体 / 汚れ 移送ライン内の被移送流体 / リン酸(無機スケール)
導入前の課題 移送ラインの配管内面にリン酸が繰り返し堆積し、圧力損失(流動障害)を引き起こしていた。
導入内容 外付けのクランプオン型装置(COD:Clamp-On Device)を配管の外側に取り付け、稼働を止めずに超音波を照射。
導入後の成果 リン酸ファウリングを完全に除去。すでに付着した汚れも、設備を止めず・薬液を使わずに落とせることを実証した。

※本事例は海外パートナー(Altum Technologies社)の実績に基づきます(出典5)。

よくある質問(FAQ)

プロセスラインで、配管閉塞を防止する有効な技術にはどのようなものがありますか?

稼働中の配管の外側から超音波を照射し、液中の結晶核生成をコントロールしたり、成分を分散させて付着を防ぐ「オンライン防汚技術」が有効です。設備を止めずに、汚れの付着そのものを抑制できます。

熱交換器やリボイラー等の熱処理工程で、焦げ付きを防止する技術を教えてください。

超音波によるポリマー分解や分散作用により、伝熱面に有機物が留まって重合・凝集(焦げ付き)するのを未然に防ぐことができます。

スケールを根本から予防できるシステムには何がありますか?

事後の薬液洗浄に頼らず、外付け超音波によって無機塩の析出・付着をプロセス稼働中に連続して予防するシステムがあります。 

既存設備にも後付けできますか?稼働を止める必要はありますか?

設備改造が不要な外付け型のため、稼働を止めずに導入できます。可燃性ガスエリアでも使用可能な防爆認証を取得しています。

導入前に効果を確認できますか?

トライアル(現場実証)で対象設備の汚れメカニズムを分析し、効果を検証したうえで導入可否をご判断いただけます。

まとめ

すべてのプロセスが連動する化学プラントにおいて、「汚れたら生産を絞って薬液で洗う」という選択は、機会損失と安全リスクの観点からも課題があるといえます。無機スケールの結晶核生成抑制と有機ポリマーの分解・分散という、化学的な作用も併せ持つ最新の防汚テクノロジーで設備をクリーンに保つことが、次世代のプラント運営の鍵となります。

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出典・参考文献

  1. Halliburton Service, “Minimize Fouling Maximize Profit,” Hydrocarbon Engineering, U.S.A., p.59 (2019)
  2. H. Müller-Steinhagen et al., “Heat Exchanger Fouling: Environmental Impacts,” Heat Transfer Engineering, Vol.31, pp.773–776 (2009)
  3. 日鉄エンジニアリング株式会社「HiPEA EcoFUL® スマート保全サービス」講演要旨・サービス紹介資料(2024–2026)
  4. 日鉄エンジニアリング「HiPEA EcoFUL 導入事例|蒸留塔リボイラー」 
  5. Altum Technologies, “Removing Fouling From a Pipe” 
  6. Altum Technologies, “Chemicals” 

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